小さいにはワケがある 自然に近い牡蠣の養殖法の力

小さいにはワケがある 自然に近い牡蠣の養殖法の力

narino のファーマー天草農工房ふぁおの筒井です。

早いもので暦は春となりつつありますが、かなり寒い日が続いている天草です。この時期は柑橘の出荷、次シーズンの準備と忙しい時期なのですが、もう一つ気になるものがあります。

そうビジネスパートナーの恵比須丸が生産する牡蠣です。皆さんも寒い時期には牡蠣が恋しくなりますよね。

そんな牡蠣、narino marché お客様からのレビューで多いのが「小ぶりだけど味が濃厚で美味しい」というもの。
実はこのコメントが多いのにはワケがあったんです。

 

生きたまま輸出できる牡蠣とは

先日いつものようにNHKおはよう日本をみていると、宮城県の牡蠣を生きたまま輸出するというのものが流れていました。
ほほー、生きたままとは。

そして観ていると「ん?」、「これって恵比須丸の養殖方法と同じではないか」と気付きました。
早速、NHKのホームページを検索、放映していた情報を再確認。

「やっぱり!」、だから恵比須丸へのお客様へのレビューが「小ぶりだけど味が濃厚で美味しい」が多いワケなんだ、と納得しました。

 

新しい養殖の方法は古い養殖方法?

そしてネットで調べてみると「国際漁業学会」のホームページに「南オーストラリア州におけるカキ養殖業の生産と流通」という論文を発見しました。
この論文でなぜオーストラリの養殖について調べたのかというと

日本ではむき身カキ労働不足が深刻化している。そこで本研究は殻付きカキ養殖業先進国 であるオーストラリアにおけるカキ養殖生産技術の日本への適用可能性と課題を明らかに するために、南オーストラリア州のマガキ養殖業における生産と流通の実態を現地調査に より解明することを目的とした。(出典:国際漁業研究▶ 論 文 ◀ 第 19 巻,2021)

ということです。
そう、牡蠣の殻をむきは大変ですよね。スーパーなどではたいていむき身が販売されています。でも、むき身では味わえない味や食感が味わえるのが殻付き、これは間違いないです。

 

オーストラリアの養殖法については、NHKで流された内容でも触れられている。
現在国内で主流の垂下式養殖は、水深が 10 メートル前後の干出しない漁場で、筏やはえ縄に養殖ロープを垂下することで漁場を垂直的に利用する。
一方、オーストラリアでは潮間帯漁場で、ワイヤーにバスケットを 1 段のみ垂下して水平方向に並べている。潮間帯漁場での養殖は、牡蠣のバスケットが干潮時に海面に出ることになる。ここがポイントです。

この海面から出ることが、牡蠣を強くしている。
NHKに登場する水産会社によると、以下の通り言われている。

新しい養殖法は「かご」を使ってカキを徹底的に鍛え上げます。カキを入れたかごを海面近くに設置。するとカキは、潮が満ちている時は海の中で栄養源のプランクトンを取り込みます。
そして潮が引くと、カキを入れたかごは海面上に出て外気や日光にさらされます。カキは身の中の水分が蒸発する生命の危機に直面し、蒸発しないように必死に殻を閉じようとします。(出典:NHK おはよう日本「おはBiz」)

実は、現在国内で主流の垂下式養殖は、その昔開発された新しいもの。
皆さんも見たことがあるかと思いますが、どこの海でも岸壁や岩についている牡蠣、干潮時には海水面上に出ていますよね。そう、より自然に近い形の条件が、潮間帯漁場での養殖なんですね。

 

小さいけど強い牡蠣

恵比須丸の養殖も写真の通り、干潮時に海面上にバスケットが出ます。しかも、有明海は国内でも干満の差が激しい海です。長時間海面上で夏の天草の日差しを浴びて育ちます。

恵比須丸の牡蠣はアマモがしげる海域で育ちます

アマモがしげる海域で育ちます

この海面上に出ていることは「鍛えられる」一方で、海からの栄養を得られない時間と言えます。そのため、垂下式に比べると成長が遅い、というより自然に近い育ちとなります。
ですので、ずっと海水に浸かる垂下式で育った牡蠣は、正に海のミルクなのかもしれませんが、実はフォアグラ状態ともいえるかもしれません。

潮間帯でのバスケット養殖は、大きさは小ぶりになりますが、健康的に鍛え抜かれた分、殻と殻をつなぐ貝柱が強くなり日持ちするカキに育つようです。そのため、輸出に耐える牡蠣になるんですね。

 

食べてみるとシャキシャキ食感

恵比須丸の原田夫妻が口を揃えていうのは、「貝柱のシャキシャキ感がいい」ということなんです。海のミルクとも言われる牡蠣はあまり貝柱は話題にならないですよね。

本当に鍛えられた貝柱は、シャキシャキで美味しいです。好みにもよるかと思いますが、フォアグラ状態でないので適切ではないかもしれませんが「サッパリ」した味わいです。
でも、味が濃いので柑橘類を絞ったり、香草やニンニクなどと共に焼き牡蠣にしても決して負けない牡蠣の味わいが楽しめます。

貝柱がしっかり奥が真牡蛎、手前はクマモト・オイスター(柑橘はレモンより大きな天草晩柑)
貝柱がしっかり奥が真牡蛎、手前はクマモト・オイスター(柑橘はレモンより大きな天草晩柑)

もちろん鍛えられた牡蠣なので、宅配で送付しても全く鮮度も問題ないようです。前述のお客様から声にあるように「新鮮で嫌な臭みもなく」とのコメントもいただけています。

今回、これまで天草は決して牡蠣の産地として有名なところではないものの、自分の舌を信じれば恵比須丸の牡蠣「天恵牡蠣」は美味しいと思っていた謎が解けた感じです。
でも元々熊本県は牡蠣は多いと思われます。その証拠に戦後GHQの命により輸出した牡蠣の種苗は熊本産、宮城や広島は戦争の影響で種苗を出せなかったため白羽の矢が当たったようです。これが「Kumamoto」として米国で人気を博すオイスターにつながったわけです。クマモト・オイスターについては以下の参照ください。

 

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