柑橘って体にいいの? 食べすぎても大丈夫?

柑橘って体にいいの? 食べすぎても大丈夫?

春の足音が聞こえる時期になりました。 天草では海ではあおさの緑が綺麗な季節です。天草農工房ふぁおの筒井です。

柑橘類の旬も収穫時期の早い温州みかんから不知火などの中晩柑のピークとなってきています。
いつもご注文いただいた柑橘の箱詰め前には、それぞれのロットの味見をしています。そのため仕事としてよくみかんを食べているのですが、先日ふと、こんなにみかんを食べていいのか? 食べ過ぎたら糖分とり過ぎ? なんて思ったりしたので、柑橘類の成分について調べてみました。

今回の内容は、次の資料を参考・参照しました。

 

結論からいうと

たくさん食べても大丈夫のようです。
調べた限りでは、柑橘は毎日食べても身体によいと言うことです。みかんに限らずフルーツには、ビタミンやフラボノイド、カロテン、アミノ酸などさまざまな栄養素が含まれています。
よく日本人は野菜不足と言われていますが、実は果物の方が足りていないのが実態のようです。調べてみると、日本人にとって最も身近な果物のひとつである柑橘類は重要な食品といえそうです。
お酒好きに朗報です。肝機能障害の低減効果が確認されています。

 

甘いのどんな成分

みかんの甘さ成分の正体は果糖です。
昔に比べて、みかんをはじめとするフルーツ全般が甘くなりました。というと年齢がわかってしまいそうですが、今やミカンといえば「甘い」が常識です。私が栽培する「不知火」はデコポンとしても販売される「甘い」柑橘の代表格ではないでしょうか。

フルーツの糖度はイチゴが10、スイカ 11、メロン 13、温州みかんは 11くらいと言われ、デコポンと呼べるには13以上の糖度があることが基準です。
糖度計では糖の種類を区別できませんが、糖は種類によって甘さが異なるのだそうです。

ショ糖を1とすると、果糖は1.5、ブドウ糖は0.8の甘さになり、果糖が多いほど甘味を強く感じることになります。
柑橘の甘み成分は、ショ糖6割、果糖2割、ブドウ糖2割の割合。「デコポン」はもともと糖度が高いうえ、甘さの度合いである糖度が高い上に果糖の割合が 23%と他の柑橘に比べてやや多いため、強い甘味を感じるというわけです。
ちなみに果糖の甘味は、温度が上がると急速に低下するようなので、果実は冷やして食べると本来の甘みを感じられます。

そこで、気になるのが、果実はその甘さゆえに、カロリーや生活習慣病などに影響するのでは?と言うことですが。
果糖は、ショ糖やブドウ糖より甘味が強いのですが、カロリ―では他の糖と同様に1gあたり4Kcalです。つまり甘く感じてもカロリーが高いわけでない。糖度11の温州みかん1個なら100gで、45Kcalということになります。

 

みかんは体にいい?

(公財)中央果実協会は、果物の体への影響についてこのように述べています。

「くだものの働き」において、果糖は腸における吸収が遅いうえ、肝臓でエネルギーやグリコーゲンにすばやく変換されること、さらにミカンに含まれる水溶性の食物繊維が、血糖値の急激な上昇を抑えることを指摘しています。そのため、血糖値の上昇指数では、ブドウ糖を100とすると、コーンフレーク81、精白パン74、バナナ51に対し、果糖は19、柑橘では40と極めて低い値になっています。

食物繊維が含まれているフルーツを食べても、血糖値は急激に上昇しないようです。
さらに(独)果樹研究所は、みかんを食べる人には糖尿病の人が少ないという調査結果を紹介しています。

温州みかんを多く食べるほど、糖尿病の有病率が顕著に低いことを明らかにしています。糖尿病の割合は、週に 2~3 個みかんを食べる人では 13.7%、毎日 1~3 個食べる人で10.5%、毎日4個以上食べる人では 6.6%とはっきり差があります。併せて、みかんを食べて血液中にβ-クリプトキサンチンが多い人ほど、肝機能のリスクが低い。

 

酸っぱいと感じるのはなに

果物を食べたときに感じる「すっぱさ」の9割はクエン酸で、残りはリンゴ酸やコハク酸などによるものです。
このクエン酸やリンゴ酸などの有機酸は、糖をエネルギーに変える代謝に関わる物質で、疲労で生じる乳酸を減少させる働きをするとされています。

柑橘類の果実中の酸濃度は季節とともに変化してきます。
みかんの場合、9月に2.5g/100gあった酸は、11 月には1gまで低下します。早く酸が低下することを「酸抜けが早い」といいますが、一般に収穫時期が遅くなるほど酸は低く、糖は高くなります。「デコポン」は、酸が1以下であることが基準になっています。

しかし、多くの柑橘類では早めに収穫していき、貯蔵して酸が抜けるのを待ちます。なぜ木に成らせたまま完熟させないかはこちらをご覧ください。

  

苦味強いものもあるよね

苦味を感じるのは、リモノイド類の成分によるものです。ネーブルオレンジ、甘夏、八朔、伊予柑などに多い傾向があります。不知火も採りたてのものは皮をむくと皮に含まれているリモノイド類の成分がついて手が黄色くなりますが、その手で実を食べると苦味を強く感じるので、皮をむいたあと手を拭いてから食べるのがおすすめです。

リモノイド類は、動物時間では発がん性抑制効果が確認されています。そのメカニズムは調べきれていませんので、人への効果はわかりません。リモノイドの一種リモニンが苦味の成分ということです。

皮を食べる場合は、ピール菓子やマーマーレードなどに使用する場合も煮こぼすなどして苦味を抜いて、砂糖で甘みをつけ食べやすくするわけですね。

 

柑橘の香りっていいよね

柑橘の爽やかな香りは、主に果皮にある直径1mmほどの、ツブツブ模様に見える油胞にある精油によるものです。
香り成分の9割は、D-リモネンという物質です。リモネンは、オレンジ様の穏やか香りを持ち、各種の柑橘オイルと合わせて石鹸や洗剤、化粧品などに利用されます。
揮発性のエッセンシャルオイルなので、皮をむいたり、強くこすったりすると油胞が壊れて香りが拡がりますよね。

柑橘類には果肉にも液胞があり、油胞に近い香り成分が含まれています。
皮をむけば果皮から、果肉を食べてからも果肉からの香りが口の中に広がるわけですね。

柑橘らしい香りの主成分はリモネンですが、微量ながら品種特有の香りを決める特香成分というものが別にあります。グレープフルーツでは、1-p-メンテン-8-チナ-ルが特香成分で、0.00000002mg/リットルという極めて薄い濃度でも香りが分かります。微量でも強い芳香を持っているのです。香水は、こうした成分を組み合わせて作られています。

香料となる精油は柑橘の果皮に豊富に含まれており、そのまま捨てるのはもったいない気がしてきますね。

 

最近流行りの機能性食品なんだろうか

最近でもないかも知れませんが、機能性の物質・栄養素は多々ありますが、その中でも注目なのはみかんの黄(オレンジ)色のもとであるカロテノイドの一種であるβ-クリプトキサンチンという成分があります。

みかんを沢山食べると手足が黄色くなるといいますが、これはβ-クリプトキサンチンが血液中の脂肪組織 に蓄えられるためです。
β-クリプトキサンチンは、抗酸化能などヒトの健康に極めて重要な働きをすることが明らかになってきました。

β-クリプトキサンチンは、皮膚や大腸、肺がんの発症リスクを低減させる働きや、ヒトの骨形成促進効果など、その効用を示唆する報告が多く出されていると言います。

β-クリプトキサンチンの化学記号
日本人は欧米諸国に比べて、血液中のβ-クリプトキサンチン量が多く、それがミカンを食べることに起因しているというのですから面白いですね。
下記グラフ(出典:(独)農業・食品産業技術総合研究機構 食品総合研究所「機能性成分・活用性等調査 -各種機能性成分を有した国産農作物(国産カンキツ類)-」)は、温州みかんの摂取頻度とβ-クリプトキサンチンの血中濃度を示していますが、やはり冬が多いようです。

柑橘類でβ-クリプトキサンチンを多く含むのは温州みかんですが、私が栽培する不知火にも多く含まれています。欧米ではオレンジやグレープフルーツがよく食べられますが、β-クリプトキサンチンの含有量は不知火の半分以下なので、同じような頻度で食べても血中濃度は高くならいわけです。

さらにお酒好きの方には朗報です! 
みかん産地として有名な静岡の三ケ日町の疫学調査では、みかんを食べる量に応じて血液中のβ-クリプトキサンチン濃度が高くなり、肝機能障害や動脈硬化、骨密度低下のリスクが軽減されていることを明らかにされているそうですよ。

 

自分が作っている柑橘類では

文旦

旬を迎えた文旦の果肉には特有の爽やかな芳香と微かな苦味があり、風味豊かです。
苦みは主にナリンギンというフラボノイドの一種で、毛細血管を強くし高血圧や動脈硬化を予防する効果があるといわれています。
果肉にはリモノイドとその配糖体およびγ-アミノ酪酸、果皮にはオーラプテンが含まれている。

・リモノイドは、ブンタン類に含まれるもう一つの苦み成分であり、果汁に含まれる主なリモノイドはリモニンとノミリンです。リモノイドとその配糖体には発ガン抑制作用があることが知られています。
γ・-アミノ酪酸は、GABAとも呼ばれるアミノ酸で発芽玄米などに多く含まれ、血圧降下作用が注目されているそうです。
・オーラプテンは、発ガン抑制作用があることが知られていて、研究では、ブンタン類の果皮には乾物 1g 当たり 0.1~0.2mg と比較的多く含まれ、特に果皮表面のフラベド部分に多いことが明らかになっています。

 

不知火

機能性成分として、他の柑橘類と同様にビタミンCやクエン酸が多く含まれている。ビタミンCは免疫力の向上などに効果があるとされ、クエン酸は疲労回復などに効果があるとされています。
つまり酸っぱいんですね。そのため、貯蔵期間が長めになります。
「不知火」は、前述の通りβ-クリプトキサンチンを多く含んでいます。

 

どのように食べると良いのか

β-クリプトキサンチンやリモネン、ポリフェノール、そしてビタミンCも果肉より果皮に多く含まれています。

ということは、皮ごと食べるのがいいということですが、なかなかみかんを皮ごと食べる方はいませんよね。ピール菓子などがありますが、あれを作るのは容易ではないですし、販売しているところも多くないでしょう。

そこで私たちからの提案は、乾燥したものです。
漢方にも「陳皮」としてみかんの皮を乾燥させたものがあります。
ふぁおのお店では、昨年までの不知火に加えて、今年はべにばえのドライもはじめました。
多少苦味はあるものの、そのままパリパリ、サクサク食べられます。
そのままでもよいですが、紅茶にレモン代わりに、ヨーグルトと一緒にして柔らかくなったのを食べるのもおすすめです。
柑橘は料理との相性もよいので、細かくしてサラダにふりかけてみるのはいかがでしょうか? 

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