11月に入るといよいよ本格的なみかん(柑橘類)のシーズンに突入です。天草農工房ふぁおも忙しい時期になってきます。
よくスーパーやフルーツショップでのポップなどで「フレッシュ野菜、フレッシュフルーツ」というテキストを目にしますよね。
- でも、本当にフレッシュな果物ってどれだけあるの?
- フレッシュな柑橘を食べるにはどうしたらいい?
今回はそんなことを綴ってみたいと思います。
スーパーで売られている野菜や果物はいつ採ったもの?
旅行やドライブに行った時、道の駅の産直コーナーって野菜が新鮮ですよね。
それは当日の朝や前日に収穫したものが多いからです。
様々野菜、果物があり例外を言い出すとキリがないのですが、果物は野菜に比べて収穫から店頭までの期間は長くなります。
店頭ではフルーツとして扱われるイチゴも、農水省の区分では「野菜」として扱われますが、ここで言う「果物」は木になる物が基本と考えてください。
野菜と果物の区分けについては、「違いがわかる辞典」(下記の画像をタップで飛べます)が参考になります。
農産物が、畑から店頭に並ぶまでには
「農家→JA→市場→仲卸→小売店」
のステップがあります。最近では、直販も増えていますが、多くはいまだこのステップを踏んでいるのではないでしょうか。
この従来型流れでは、農産物が収穫されてから店頭に並ぶまでに1週間ほど掛かることはめずらしくありません。もちろん葉物野菜などもっと短期間で流通させているものもあるでしょう。
長いものでは収穫から半年後に売られている
果物の中でもその代表格の一つが、私も生産しているみかん(柑橘類)です。
いまは店頭では極早生が終わり早生みかんが並んでいるかと思いますが、これら早稲系のみかんは柑橘でも早く店頭にならびます。
早稲みかんのように比較的早いものでも、産地の九州や四国から陸路で首都圏へ移送すると考えると、店頭に並ぶまでには1週間は掛かるでしょう。
また果物は、収穫時に付いた傷から腐敗がはじまるので、私の場合は3〜4日は倉庫に置いて、問題のないものを出荷するといった対応をしています。そうすると、店頭に並ぶのは収穫してから10日後を超えてきます。
デコポンとして販売されるみかんや文旦など、早生みかん以外のみかんは、みかんは、店頭に並ぶまでにはもっと日数が掛かっています。店頭に並ぶまでにはもっと日数が掛かっています。
デコポンの名前で知られるみかんの品種名は不知火と言います。
不知火(露地:熊本天草)の収穫期は、12月下旬から1月中旬で、その後、生産者が一次選別をした後に貯蔵を行います。 早いものは2月中旬からJAへの出荷が始まり、遅いと6月頃まで出荷が続きます。
つまり、店頭に並ぶデコポンは、早いものでも収穫から1ヶ月、遅いものでは半年を超えているのです。
デコポンは、みかんの品種の名称ではありません。熊本県果実農業協同組合連合会(JA熊本果実連)の登録商標です。デコポンブランドで販売できるのは、糖度・酸度で一定の条件を満たして、JA熊本果実連の許諾を受けたものだけがです。
私も直販では「不知火」として販売しています。
なぜ柑橘は長期間貯蔵すのか
野菜の感覚からすると、なぜそれほど長く貯蔵するのか。と疑問に思うかもしれません。それには大きく3つの理由があります。
1点目は、味です。
収穫したての柑橘類には強い酸味があります。しばらく貯蔵することで、徐々に酸味が減っていくことで甘味を感じるようになります。よく追熟という表現が使われることがありますが、みかん場合は熟すというより酸味が減って、相対的に甘さを感じやすくなるということです。糖度は、貯蔵中に水分が抜けると、相対的に上がりますが、収穫後に糖の量が増えることは基本的にはありません。
貯蔵はデコポンに限らず、その他の多くの柑橘でも行われています。デコポンの場合は、糖度 13 以上、酸度 1 以下という出荷基準があるのでよりシビアです。
2点目は、生産体制・流通の都合です。
生産者から一度に出荷してもJAでの選別作業が追いつきません。もちろん市場や小売店も、一度に大量に出荷されても受けきれないという問題があります。
野菜と異なり果物は順次収穫することが難しく、短期間にまとめて収穫することになるために起こる課題です。
ちなみに長期貯蔵するためには、一つ一つビニールの袋に入れます。JAに出荷する際に今度は袋から出します。生産者としても、やらないでいいならやりたくない作業です。
3点目は、次の項でお話しします。
出荷する分だけ収穫すれば、フレッシュで出せるのでは?
ここまで読んで頂いた方には、「ならば収穫を遅らせればいいのでは?」、「なぜ収穫を遅らせないのか」ということを思う方がいるのではないでしょうか。
その答えが、3つ目になります。
それは、生産の安定性の維持・確保するためです。
酸味が減るまで木にならしておくと、次のようなデメリットががあります。
① 隔年結果が起きやすくなります。
木が実を大きくして、甘くするにはたくさんの栄養が必要で、長く実をつけておくと、木に負担がかかってしまいます。結果として、翌年の実のつきが悪くなります。
生産者としては、毎年同じような収穫量を目指しますが、今のやり方でも完全に隔年結果を防ぐことはできません。「裏年」というのは、そういう意味です。
② 鳥獣害を受けやすくなります。
人がおいしいと思うものは、動物もおいしいと感じるようです。食べごろになってくると鳥やタヌキやイノシシなどもやってきます。
タヌキやイノシシは、電気柵などの対策が取りやすいですが、厄介なのが鳥です。整地されていない露地の果樹園は傾斜地など悪条件が多いです。木を網で覆うなどの対策は難しく、やろうとすると費用がかかり過ぎます。そのため、鳥に食べられる前に収穫することを選択します。
これまでには不知火の収穫が遅れてしまい1月下旬になったことがありましたが、その際にはかなりの量が鳥につつかれてしまいました。
③ 寒波による被害を受ける可能性が高まります。
温暖なイメージがある九州にも、寒波はやってきます。私が生産している天草は、九州の中でも温暖な気候とされていますが、それでも1月下旬から2月には、寒波がやってきます。
寒波がやって来て、気温が氷点下になるところに長く置いたままにしたり、長く降った雪に覆われたりすると、果実が傷みます。見た目は問題ないように見えても、中身はスカスカになっていること。そうすると商品価値がはありません。こうした被害を避けるために、寒波がやって来る前に収穫してしまうのです。
温暖化が進んでいるといわれる近年も、寒波はやって来ているので、より注意が必要です。
フレッシュなみかんを食べられないの?
もちろん出来ます。
「みかん狩り」などの収穫体験では、木から採ったものをすぐに食べることができます。なんなら木になっているものにそのままかぶりつくことも・・・
採ったばかりの皮をむいた時には、飛び散るしぶきを見ることができるでしょう。油胞(皮のつぶつぶ)からの成分が飛び出し、みかんの香りがパッと広がります。
私が運営する果樹園でも不知火の「みかん収穫体験」やっており、お客様には好評を得ています。
もう一つは、生産者から直接購入すること。産直の中には、通販で生産者から直接買えるところがあります。
ただし、多くの場合、みかん狩りも酸味が程よくなってからのオープンになるでしょうし、産直で買えるものも通常は寝かせたものを発送することになります。採りたてフレッシュなものを味わってみたい人は、シーズンのなるべく早いうちにお試しになるといいでしょう。
そうでない時期でも、産直通販では国内ならば生産者から発送し2日目にはお手元に届くはずなので、流通を通じて、暖房の効いたスーパーの売り場で数日おかれたものよりは、圧倒的に瑞々しい果実を得られると思います。
フレッシュなほどおいしい? 地域・人によって違う「おいしさ」
果実の種類にもよりますが、必ずしもそうとは言えません。
また、味はひとによって好みが分かれるものですので、「フレッシュだから」、「甘いから」といって、誰もが美味しさを感じるものではないでしょう。
柑橘類の場合、早採りをおすすめできるのは、柑橘独特の酸味が好きな人。酸っぱいものが苦手な人は、一般的に推奨される時期に召し上がって頂いた方がよいとおもいます。
実は味覚に地域性があります。関東出身の私は、西日本は甘めの味付けが多いと感じています。九州では普通の醤油にも砂糖が入っています。
また、私の自宅周辺の方々は甘いものが好きで、強い酸味や塩味、辛みなどの刺激を好まれない方が多いという印象です。
「デコポン」は、熊本発のブランド果実です。そのため甘い味を楽しめる柑橘に仕上がっています。
私のつくった柑橘をお求めいただくお客様を見ていると「柑橘好き」と自認している方には、「不知火(デコポン)」よりも、文旦や八朔、甘夏などが人気があります。
「柑橘好き」には、きっとフレッシュな不知火をご満足いただけると思います。
ぜひお試しください
フレッシュな不知火は、narino marchéでお求めいただけます。
(予約販売期間:11月〜翌年1月中旬)